成寿第三十六号 追悼 ― 黒田武志老師 ―

                追悼のことば

大本山總持寺貫首 大道晃仙

  横浜市・善光寺住職黒田武志老師のご遷化に際し、謹んで哀悼の意を表します。
   「釈尊のお示しになった大慈悲の教えを如何にして世界全体に広めてゆくか。」多くの仏教者が思いを巡らすその永遠の目標に向かって、自ら身をもって具体的にそして積極的に実践されたのが老師のご生涯でありました。
  自らの宗教活動の信念を「宗祖を通して釈尊に遠る」という言葉で常々表現しておられたと承っております。
  世界に仏教を広めるというその大誓願を成就するには、まず人材を育成するということから始めなければなりません。
  そこで老師は昭和五十九年に、「善光寺海外留学僧派遣育英会」を一ヶ寺独力で設立し、毎年留学僧を海外に派遣するという事業を興しました。他国からの求道者も日本に招き、事業全体が確固たる成果を実現するに至りました。誓願成就への勇猛心、そして実行力、まことに称賛に堪えません。
  昨今世界各地において悲惨なテロや戦闘が連鎖し、平和とはほど遠い状況を呈しています。 国や民族間でお互いに自らの考えや価値観を相手におしつけようとするために、多くの惨劇が繰り返されています。
  現代はまさに広い視野に立っての相互理解と、代償を顧みない大いなる慈悲の心が希求される時代であります。世界の平和、人々の幸福のために今何ができるのかということをわれわれは問い直し、そして具体的な活動をどのように展開させるべきなのかを考えてゆかなければなりません。
  そのことはすなわち、一生をその大命題に捧げた老師の歩まれた道を、今一度われわれが深く学び、そこを拠りどころとして世の中に広く働きかけてゆくことにつながります。老師の御徳は賛仰し尽くせません。
  ここに重ねて老師のご遷化を心から悼み、追悼のことばといたします。

合掌