成寿三十六号 追悼 ― 黒田武志老師 ―

                八面六臂の大菩薩

前永平寺監院 南澤 道人

  黒田武志老師が遷化されて早くも一周年の忌景を迎えようとしております。月日の経つのは歳と共に迅速に感じられます。
  老師のことは善光寺海外僧育英事業のことで業界紙等を通じて大まかには知って居りましたが、直接お目に掛かることが出来たのは私が大本山永平寺の監院職に就いてからであります。
  或る時老師は御令室と共に上山されて、善光寺海外僧育黄会について、両大本山禅師さまのご慈慮をいただき、それぞれ監院に役員に加わってほしいと就任の要請に見えた時でした。然しそれより以前長野市篠ノ井円福寺藤本幸邦老師の処でお話しの折、偶々黒田老師の事に話が及びました処、実は黒田老師のご両親は藤本老師のご先代全機老師が取り持ったご縁で、ご母堂は須坂市の名刹興國寺先々代のお嬢様であって、此の寺の座敷がお見合いの場所ですと、お聞きして、信州人の一人として何か身近なご縁を思ったことです。
  やがて善光寺様に拝登の機会も出来、次第にご親交を重ねていただきましたが、取りわけお世話になったのは、中国から留学の為に来日して私の弟子となって駒澤大学を卒業した胡君が、育英生として認めて頂きドイツ等に留学し、又善光寺に於て立職法戦式をさせていただいたご恩は忘れることが出来ません。
  高祖道元禅師七五〇回大遠忌には焼香師をお勤めいただき、育英事業の着実な発展を願い、善光寺の興隆は勿論、タイ、スリランカ、中国、韓国等海外仏教者との交流友好に奔走された老師は正に八面六臂の大活躍をされた大菩薩であられたと思います。
  今既に育英会のご支援を頂いた優秀な人材が各方面に活躍され、将来の仏教の興隆と世界の平和に大きな力となることでしょう。
  大寂定中安らかにお見守り下さるよう老大和尚の品位増崇を念じて止みません。

合掌