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成寿 第37号 〈国際レポート・アメリカ〉
前角インスティチュートオープニングセレモニーに参列して


善光寺住職 黒 田 博 志

  私は師父大圓和尚の予期せぬ遷化により、横浜善光寺を引き継ぎ住職の拝命を受けました。善光寺を一時はどのように引き継ぎ発展させればよいのか、ただただ無我夢中でした。さいわい師父はあらゆるポジションに多くの立派な人、人材を残してくれました。お蔭で寺にはなにもなかったように滞ることなく今日にあること、全く師父の余徳と感謝しています。
  さて、いただいたテーマは「前角インスティチュート」。師父の実兄、私の伯父、前角博雄老師は、今より四十五年前単身渡米、欧米人対象の禅の開教に従事、以来初めて日系人社会以外の人々に禅を伝えました。遷化された時点の弟子は、印可一名、嗣法の弟子十二名、得度者五十余名。弟子たちは世界各地に布教を展開し、かかわる禅センターは二十三箇所、禅の拠点はすでに、百箇所を超えています。
  グラスマン徹玄老師と前角老師の出逢いは一九六三年。徹玄氏はロサンゼルス禅センターを初めて尋ねたが、ちょうど前角老師は留守中。そこに対応したのが、私の師父大圓和尚(当時開教師)であったそうです。その日、その時から二人は意気投合、以来一緒に坐禅に没頭し、いつしか前角門下として身を投じていました。その後の活動は多岐に亘ります。
  前角老師遷化の後十二年、前角老師によって蒔かれた仏種は地中深く根をおろし、時を得て今勢いよく芽をふき、萌えだしました。その中核をなす普及拠点がマサチューセッツ州ハートフォードの郊外に広がる緑豊かな森の中、現在は四万坪の大聖地。この場所に、世界中の弟子たちと宗門の関係者が参集し、前角老師のご命日である、五月十五日にオランダゼンリバーの天慶老師や北アメリカ国際布教総監秋葉老師も列席の中、追悼供養とともにオープニングセレモニーが挙行されたのです。
  インスティチュートの理念は、@禅の研修と学術研修、A平和運動、Bソーシャルエンタープライズの三つ。新開地にはすでに禅堂を中心に必要最小限の施設が整い、山の各所に予定されている建物の杭があちこちに立ち並んでいます。
  「前角インステイチュート」の在り方は明らかに日本曹洞禅とは現象面においていささか異なるように思います。十年前、アメリカ禅の事情を具に観て歩いた師父と東鱆チ学長(現大乗寺住職)は「アメリカ禅の拠点ではどこでも禅を深く学び、専門道場で徹底した只管打坐、禅参サンガを形成しながら坐禅の修行は欠かしていない。ひとつには自己の真実性を学び、ひとつには現在アメリカ社会に貢献(或いは世界規模)する福祉活動である。いま世界が病み、生き方の根本的矛盾を解決し、人心救済をしようとする機能は、道元禅師の教えに従っており、アメリカの禅こそ、はじめて歴史的、社会的存在となって、人々に『生きる力』を与えようとしている」と結んでおります。今まさに「インステイチュート」に貝現化しているように思いました。
  私はこのオーブニングセレモニーに参加して、法要に臨んだ時、師父大圓和尚の発願の心を読むことができたように思います。「横浜善光寺留学僧育英会」の原点がアメリカにあった。育英会存続のプロセスを見る時、半端でない師父の「生き方」と「徹し方」。到底、私はマネをしたくてできるものではありません。しかし、私には与えられた使命をしっかり受け止めて発展させる義務があることを強く感じています。
  師父大圓和尚が抱き続けた夢と希望を追いながら、「前角インスティチュート」を離れ帰国の途に着きました。

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