成寿一覧表

成寿第42号 巻頭語
善光寺住職黒田博志

 東日本大震災で被災された多くの方々に心よりお見舞いを申し上げ、不幸にして亡くなられた方々に謹んでご冥福をお祈り申し上げます。またいまだ行方のわからない方々をお待ちのご家族、ご親類・縁者の皆さまの心中をお察し申し上げ、衷心よりお見舞い申し上げます。 
 三月十一日を遡る事三ケ月、私は新命住職として晋山式を執り行わせて頂き、横浜善光寺第三世として法燈を継承し、ご縁の皆さま、多くの檀信徒の皆さま方に披露させて頂きました。住職としてこの大震災を目の当たりにし、「師父が存命中ならどのように行動し、尽したであろうか?」と思いを馳せるとき、自ずと自分の無力さを痛感させられました。
 しかし、心落ち着かないながらも「脚下照顧」と自らに言い聞かせ、「自分の出来る事を只管(ただひたすら)に行じていくのみ!」と心に誓い、日々を務めた一年でした。
 師父の七回忌法要。その報恩行として晋山武に臨み、以来、一年を経て、『いまここ』にある自分。省みてあまりの拙さに反省するばかりです。予期せぬ事柄が山積する寺の日々は、法燈を護る事がどんなに大変な事かを痛感させられます。
 寺の行事にしても、これまでは高僧、名士の方々をお招きして、ご法話やご講義などを頂戴しておりました。しかし、晋山式以来、総代の総意として、全て、新命住職の役割と責任になることを厳命され、逃げ道を閉ざされ、本当に難儀しました。その都度お檀家さまには、我慢のご拝聴賜リ、ありがとうございました。師父の残した諸氏の方々は、常に私に厳しく接して下さいます。
 悉くが無我夢中や必死さだけでは勤まらないのが寺の住職。この一年、私は師父のうしろ姿を想い出し、マネする事に没頭して参リました。しかし、わかっている『つもり』、知っている『つもり』なだけで実が伴いませんでした。真に辛酸を嘗め、耐えて忍んで行を尽した師父との差はあまりに歴然としており、万分の一も届かなかったことを骨身に沁みて感じました。
 私はあらためて初心に還リ、一期の仏道に専念する決意を固め、新しい心と誓いを以って、師父の理念、「祖師を通して釈尊に還る」を胸に檀信徒の皆さまとの絆を太く長くつなげ、善光寺が少しでも皆さまの心のやすらぎとなるように精進して参ります。
 どうぞ四方の皆さま、一層のご教導、ご鞭撻賜りますよう心よりお願い申し上げます。

平成二十三年三月十九日

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